足を滑らせる話。


たとえ夜目がきかなくても

部屋がやや片付いてなくても

なんとなくのものの配置はわかると自負していたが


電話をしながらベッドの上を歩いていたら

足を踏み外してしまった。


たまたまずり落ちた先に

充電ケーブルやら本やらが

落ちてなかったおかげで

大ごとにはならなかったが


少しベッドの上に布団ではなく

ベッド用のパッドを買うか悩んでしまった。


電話しながらだったので滑落した時の

音声は入るし、一緒に寝ようと思っていた

声にびっくりした猫は逃げ出すし

散々だった。


掃除をしよう。

そしてベッドの位置を変えよう。


今の位置では大切な絵が置いてある棚に

猫がベッドを踏み台に乗ってしまう。


脛もすりむいたしあざもできた。

悲しい。



そんな日。

ヒロコという名のハムスターの話。



わたしは都内で働いている一人暮らしのOL

朝から終業までずっとパソコンと向き合って

パチパチカタカタやっている。


ワンルームに住んでいて

疲れてはすぐベッドに倒れ込んでいる。


人恋しとは思うが、ひとりでいる時間も

好きなので結婚とかはあまり考えてない。


ベッドに倒れ込んで、目をやると

テレビの隣に小さなケージが置いてある

カラカラと回るまわし車を見る。


わたしは目を細めて笑う。

微笑ましい。


今日とてヒロミは元気だ。

働いてる時のわたしのように

カラカラと回し車を回し続けている。


ヒロミの前にヒロコを飼っていた。

小学生の時分、散歩が必要な犬や

大きなスペースの要る猫は飼えなかった。


ペットを飼いたがる自分に見かねたのか

情操教育にと飼ってきたのか

ある日父が買ってきたのが

ヒロコだった。


陽に揺れるススキのような色の

可愛い生き物だった。


わたしは覚えていないのだが

ある日逃げ出してしまったらしく


ただ当時のわたしは両親によると

わたしにしては割と長く

落ち込んでいたようで

それ以降生き物は飼っていない。


けれど薄情なことにわたしはヒロコのことを

数ヶ月前ペットショップで

似たハムスターに出会うまで忘れていたのである。


ヒロコの代わりにやってきたヒロミ。

同じハムではないが

ハムスターという生き物はとても可愛い。


また明日からの仕事を頑張ろうという

気持ちにさせてくれるのでありがたい。





っていう空想の話。


暑さでジリジリしながら

ハムスターヒロコと

OLの私の空想をしながら

帰路についた。


そもそも最近OLと自称している人が

いるのかわからない。


なんでヒロコなのか。

ススキの穂のような毛色の

ヒロコというハムスターに思いを馳せる。


そんな日。

走り続ける肉体の話。


自分は運動が得意じゃない。

けれど走るのは好きだ。


それは嘘だ。


すぐ息は上がるし胸も痛くなる。

颯爽と駆けて

自分を追い抜いていく河川敷ランナーを見ると

大人しくウォーキングしていなさいと

決して言われないが背中から語られるようで

人前で走るのはとにかく苦手だ。


不恰好な姿を人目に晒してるような気もして

得意でない。


けれど運動するようになった友人は

長距離が走れるようになってきたという。


自転車でも車でも、電車でも

飛行機でも人は遠くへ行ける。


でも地に足つけて遠くへ行くには

自分の足で行くしかない。


やせた自分が見てみたい。

ルッキズムとかそういう話ではなく、

せめて健康な体重ではいたい。


ランニングでも運動でも

新しく始めることは

これを始めましたって宣言したい。


それでもそういえばあれ続けてる?と

聞かれるのは得意ではない。


じわじわ日にかけて腐りかけている生ゴミ

どう処理するか考えあぐねるような

気持ちになってくる。


今ならまだ戻れるけども、したくないみたいな。

誰も言わないけども

また三日坊主なのねって思われる気がする。


誰も思ってないのに、

自分が後ろ指を指している。



自分は運動が得意じゃない。

けれど走るのは好きだ。


そう言えるようになりたい。

涼しくなったら通勤は歩いて

向かってみようかな。


今暑くて辛抱たまらん。


スポーツはしませんが

走るのは得意です。

言ってみたいなぁ。


走り続ける肉体に憧れる、


そんな日。


風吹く木々と鳥と卵の話。


暑くてジリジリうだる中でも

風吹いてるなら外の方が涼しく感じるこの頃。


ゴム手袋をはめるためにビニール手袋を外す間

そんな何分も時間もかけてないはずだけれど

風が吹いて木々が揺れてる。


ふと空に目をやると風にあおられながらも

木のてっぺんでしがみついてる鳥がいた。


あの木の中に巣があるのだろうか


今思えばそんな風で揺れる部分に

果たして大事な卵を預けるのだろうか、

疑問だ。


風にあおられながらも枝に

しがみついてる鳥をいつまでも

眺めてしまいそうになる。


そうもいかないのでしばらく眺めたら

奥の作業に引っ込んだ。


再び見に行ったらもういなかった。


後日裏口の清掃をしていると

うずらの卵のような柄の

小さな卵の殻を見つけた。


妹が昔友人と卵を拾ったと言って

ジップロックに入れて持って帰ってきたが

柔らかくて最後は潰れてしまったと

言っていた話を思い出した。


あれくらいの小さな卵の殻だ。

カケラしかなかったけれど

鳥がいて、小鳥がいて、卵があってみたいな

普段目にすることのないものに

心揺られたりなどした。


落ちているってことは誰かが

食べたりしたんだろうか。


いろんなものが繋がっていると思いながら

暑い中美味しく飲んだであろう

ビールの空き缶を回収したりした。


そんな日。


行ってみたい国の話。



行ってみたい国の話、それはドイツ。

ドイツ語を習っていた頃、

話す方の授業の先生はよくドイツに

いた頃の話をしてくれた。


夏休みかどこかで希望制でドイツに

行く話が出ていた。


もちろんドイツ語を習っているので

ドイツ語で会話をしてもらいますという話しだった。


そのための渡航費が欲しくて

駅中のコンビニで働きたかったのだが

未経験で駅の朝の時間は難しいと思われたのか

何の連絡も来ず不採用になってしまった。


結果、あの文房具屋さんに流れ着いたのなら良かったかもしれない。

結局駅のバイトの不採用だった事で

何だかモヤモヤしながらも


いや、ドイツ語で会話できるほど

勉強してるのか?と言う高い木の葡萄を

眺めながら不貞腐れていた。


英語もドイツ語も文を読むことは

出来ても、その場で人がいる前で

喋らなくては、ましてや会話!と

思うと緊張してしまって

どうしても話すのは苦手だった。


ちょうどその頃妹が旅立ち、

自分も学校をしばらく休み

単位は先生のおかげでもらえたけども

ノートや教科書を覚えることしか

できなかった。


その後流れ着いた文具屋でお給料を貯めつつ

祖母にお金を借りたりして

初めてひとりで

北海道の友人を訪ねたりした。


北海道の友人を訪ねた話を掘り起こすと

そういえばドイツに行きたかったという

一見脈絡のない話をポコポコと思い出すのは

そういうことなのかもしれない。


何だかドイツ語勉強したくなってきたな。

大学の図書館は教科書や参考書もたくさんあって良かったな。

普通の図書館には無さそうだな。


ふむ〜。


そんな日。



追記

昔使ってた教科書が今は本ではなく

デジタル式になってて驚いてしまった。

時代だ……


融解する魂の話。


うだる暑さの中、遠くを見て

道路の先がじわじわと波打っていたら

だいぶ暑いという判定をしている。


祖父が熱中症で倒れたという電話が来たり

自分自身も暑くてヘロヘロしかけているので

サーバーから出るポカリをカプカプ飲んでいる。


今日は暑いよ、溶けるなよと

朝から父の友人に声をかけられる。


ちゃんと水分摂ってる?摂った方が良いよ

と先輩からも言われる。


とてもじゃないけども

毎日辛抱たまらんくらい暑い。

溶けて溶けてしそうだ


もやりもやりと地面が揺れて

蒸し蒸しじっとりとまとわりつく汗や

熱気にどうにかなりそうだ。


汗を拭いながらひたすら

タイルを擦っている。


暑い、暑いなぁ。


暑くて暑くてだんだんぼんやりしてきて

自分が暑さの中に溶け出て

タイルの隙間から排水溝へ流れ出そうな

そんなの心地がしてくる。


ぁぁきっと 融解する魂とは

流しそうめん そのような形。


冷たくてキンとするような

家では食べられない

鰻やエビの乗った素麺が食べたい。


どこで食べたのだろうか、

もやの中全く思い出せない素麺の心。


そんな日。


共通言語の話。


世界の共通言語、英語。

自分は邦画よりは洋画の方が好き。


かと言って本は邦書が好き。

耳慣れない人名はなかなか覚えられなくて

誰が誰なのか行ったり来たりしてしまう。


最近になってそれは別に和名でも変わらないような気がしてきた。


さておき共通言語の話。


学生の頃は英語を訳すのが好きだった。

試験が意識させるようになってからは

飛ばし読みみたいな読み方が推奨されたけど

それでも全文訳して楽しんだりしていた。


中学生の頃に翻訳を仕事にしてる

母の友人にハリーポッターを原文で

読んでみなよ〜と言われたが

とてもではないけども読めなかった。


後になって、英単語自体は易しいけれど

文法が初心者には難しいという話を聞いた。


小学生に掛け算ができるなら

割り算もできるよというようなものだろうか。

努力を要すって感じ。


英語が話せたら、もっといろんな世界の人と

話せるのかな。


日本語も不自由なのにと思っていたが

そう上手くいくかなと口を尖らせていたけれど


編み物の外国の編み図を目にするようになって

編み図自体が読めればなんとなく

書いてあることが読める気がする。


外国の可愛い編み図も外国のものだからと

諦めていては編めなかったものかもしれない。


英語も学問も学んでいるうちは楽しい、

ただどうにもアウトプットが上手くできない。


編み物のおかげで少しはできた気がする。

棒針のものが作れたら良いんだけどな

最初は靴下とかかな。


次のステップにすすみたい。


そんな日。



(編み物モニターなるものに応募してみた。

それも一つのステップ。)