虫の知らせの話。【前編】



先日ゴキブリを倒した話をした。

Gを倒すメリットは、もちろん

今後同じものとは出会わないことだ。


ふと忘れた頃にトイレの洗剤裏に潜んでいたアイツと、

相対することがないこと。


もちろん別の個体とは出会う。

それは本当に悲しいことだ。


デメリットは……

デメリットとはと思ったところで気づいた。

この話をしようと思ったきっかけだ。


トイレの扉の裏に潜んでいたアイツは

夢の中に出たのである。


自分は虫なんて特に苦手なので

目に焼き付いて離れなかったのか


いやに解像度高く現れて

心臓はドキドキするし

真夜中とは言え目なんか

冴えに冴えてしまった。


寒いと良くないと消した冷房さえ

早く利いて欲しいと願うくらい

暑くなってしまった。


結局奴を倒そうが倒すまいが

奴と相対して目に焼き付けた時点で

負けてしまっていたのだ。


もう、こう何というか、背中の艶とか

足に生えたトゲとかそういう

ほんとそういう、

みょんみょんと動く触角だとか


尻尾みたいなトゲとか

尻尾みたいなトゲ?

そんなものが本当に生えてるのか

怖くて検証できない。


ほんとあの一瞬でよく見てるな。


ともかく全てがはっきりと見えてしまって

そのくらいの解像度で夢の中に現れた妹も見せて欲しい。


変にボヤとして、もうまた変なことしてと

彼女は言うけれど


思えば自分は彼女の前では変なことばかりしている。

そもそも姉には向いていないんだ。


自分はバツ悪く俯いているのか

鼻先から上は霞がかかったように

いつも見えやしない。


ひどいあんまりだ、あんまりすぎる。

また妹に会えたら何が話せるだろうか。


辞めたければ辞めれば良いんだ。

自分みたいに芋虫のようになっても

なんとかなっているし。



後半に続く。