おもひではゆずのかほりの話。


思い出はゆずの香り。

思えば久しぶりに湯船にじっくり浸かった。


いつもはのぼせるとか、暑いとか

そんな理由でよし今日は読書をしようと

本を持ち込んでもすぐ出てきてしまう。


ただ今日はこんこんと眠れず

実家に帰った妹に部屋をこんなに

めちゃくちゃにしてとおこられるやもとか


有る事無い事考えてほとほとに疲れていた。


寒さに耐えられず、お風呂を沸かして

身体を洗ってざぶりと入る。


あぁ母さんが自分たちは風呂のカビが

気にならないのかと言っていた気持ちが

タイルの隙間や天井やらに現れていて

力なく笑ってしまった。


ははは、自分にできるのは

どこからともなく飛んできた

羽の丸い小虫を潰すことくらいと

目を閉じたら暫く湯に浸かることになった。


目を伏せると母さんか誰かのはまっている

バスソルトのかおりがする。


父さんの使う入浴剤は色が濃くて

香りもなんだかはっきりしすぎている。


これは無色だけどじわじわ

柑橘系の香りがする。


昔のアルバムを見たせいか

しみじみとしてしまう。


今はいない祖父や妹がまだいた頃

みんなで飲んだゆずジュースの味。


あの頃はただ美味しいだけだった。

もう今は過ぎ去った思い出やら

郷愁が添加物に加わってしまって


とても元の味には思えないような気がする。

喫煙者のそれ、


料理の味が変わったんじゃなくて

食べる人の味覚が変わったのだ。



ともあれなんか良いな、じわじわポカポカ

やっと眠たくなってきた気がする。


世界は自分には早すぎる

今日は休み、

倒れてトイレで意識なく眠り始めた時の

ようなわかる人にしかわからない


わかる人がいるかもわからない

心地よさがある。

やっと眠れそう。


夢の国の程よく冷たいタイルは

寝心地が良い。


何度も言うとトイレ寝フェチみたいに

聞こえてしまうな。


それはまずいな。


そんな夜明け。