タフでなければの話。


タフでなければ生きられない。

村上春樹氏の海辺のカフカ

煽り文で目にした気がする。


それをなんとなく自分の弱さを、

節々に目にして時々蹴つまずいた折に

思い出す。


正しくは

タフでなければ生きていけない。

だったようだ。


漫然とここまで生きはしたが

タフでなくても生きていけるのか。

これから帳尻を合わされ精算され

ツケを払わされるんだろうか。


あまり考えたくない、チーズの乗った

ハンバーグカレーが食べたい。


タフであるということ……

今読み直してるわたしに会うまでの1600キロでも度々出て来る。


1日歩き続けても13キロと

思ったが、体重半分くらいある荷物を背負い

山を登っていくのだ。

それも砂漠やら雪野を超えて。


様々なものと出会う。

昔母の好きだった野草とか

昔見た星空だったりとか。


その野草を手のひらで擦り、

香りをかいだ時に鮮明な母の姿を思い出すシーンがある。


人を忘れるときは声から、

においは最後まで忘れないと聞いた。

出典はわからない。


心理学だったのかな、元恋人の〜なんて

記事を読んだがエピソードは覚えているが

人間のことはもう忘れたって感じ。


そんなことより妹だ。

視覚は写真がある、声はきっとどこかに動画が

味覚もきっとあの頃作ってた料理の中に思い出せるかもしれない。


触覚は、棺に入ったもうなんだか

かたい肉というか、2人で見に行った

蝋人形みたいになった柔らかさしか

思い出せない。


わからない、ネイル好きなんだねって

手を取られたけど

記憶すらなくなった妹にモヤモヤして

突き放した時の手のひらとか⁇

あまり思い出したくない。


嗅覚もふと最期にいつもあんなに

綺麗好きだったのに汗くさいなんて

珍しいみたいな……

あの日、レポートもやらずにサボってたんだ


ねぇ、ちょっと、って声を掛ければよかった。

まさか風呂場で死んでるなんて思わないから。


ねぇ、ちょっと……ねぇ、ちょっと……

ねぇ、………


なんであんなに仲良かった妹をおいて

今は不仲に虹がかかるような妹と

ふたりで動画なんて眺めていたんだろう。


3人で見れば良かったのに。

この動画、好きだったんだよ。

ねぇ、このドラマも好きだったよ。


この犬は自分が飼いたがって来た犬なんだよ。


タフでなければ生きられない。

未だにどうして⁇というような

自問自答から抜け出せずにいる。


自分が恋人の歳を確認するときは

亡くなった妹の歳を確認しているなんて

言われてしまったが


享年が末の妹の歳が超えた。

お姉ちゃんの歳を超えてしまったと

妹が話していた。


いつか私の歳を超える日もくるのか。

なんだか気分が暗い。


タフでなければ……

タフでなければ………


タフでなければ生きられない⁇

本当にそうだろうか。


そんな疑問の日。