映画を見る、遠くを見るのはなし。


もう朝から散々だった。

最近は悪夢をよく見たりするけれど

誰ともつかない人に腹部を滅多刺しに

される夢で目が覚めて


気分もあまり良くない中で

とりあえず仕事に行かねばと

午前中頑張ったがどうにも難しくて

早退した。


お前は愚図で鈍間で

おまけに見栄っ張りで

君がいてくれて良かったと言われたいが

為に空回りを続けてこんなザマだ。

みたいな不安がもくもくしていて

本当にだめだった。


明け方ムクムクと

もう本当にダメかもしれないとブツブツ言って

うつ病の人間は治りかけた頃に自殺する、

鬱がしんどい時はそもそも体力がなくて

出かけ始めたりとか体調が戻った頃が

危ないと先生が言っていたのを思い出したりした。


自分がした悲しみを誰かに負わせるわけには

いかないとこれまで生きてきたけれど

トイレ掃除の隙間に

もうあんたは死にたいもんだと思ってたと

母さんに言われてからしばらく経ったことに気づいた。


人の気もしれないで。


トイレを磨く、優しさにかまけて

自分は人に甘えすぎてる。

柱に縄かけて死ぬべし、思って遠くを見つめてしまった。


トイレに水をかける段になって

長靴に足を突っ込んだ時に蜘蛛がいたら

困ると毎回かかと部分を床に叩いているが

ゴキブリの死骸が引きずり出されて

芯からびっくりしてしまった。


たとえ死骸でも密室にいるのは心臓に悪いので

しばし外の花壇に放っておいた。

終わる頃にビニール袋にしまい、

動き出したら困るともうひと踏みしたが

あれは自分の来世かもしれんなんて

思ったら無下に扱ったことを後悔した。


店内の片付けをして

蛇口コーナーの鏡を拭き

早退さえすれば大丈夫だろうと

思ったら幾ばくか元気になった。


ただ帰る頃にはぶり返して

暑さと辛さに首がうな垂れ始めて

恋人の送るメッセージが度々届かなければ

路端で煮崩れていた気がする。


3時間弱あるこの世界の片隅に

少しだけ見た。

白波がうさぎに見えるシーンがとても良かった。


40歳になるまでに結婚するつもりがなければなんて言わなければよかった。


10年もいたら離れられなくなる。

今だってそう。

自分は明日死ぬかも分からんぞみたいな

精神状態でよく言えたもんだ。


不器用な人間には不器用な人間の良さがある。

面倒くさがりにはめんどくさがりの、


この状況で言えるのは

縄をかけるにはあまりにも不器用だし

縄を買うのも面倒くさい、そういう意味。


愚図で鈍間……

昼間に消えていた食欲が戻って

少しばかり安心した。



そんな日。