君の横顔を思うによせて

前から見るも違う、

横から見るも違う、

ただぴたりとすれ違った時は違った。

 

まるでそのものだった。

 

前から見れば大きさが、

横から見れば体型が、

すれ違った時の横顔だけが

ただぴたりと君に似ていた。

 

わたしの方に向かって歩いては来たが

それは別の犬なので、

こちらに振り向きもせず歩いていった。

 

ただ、いっときすれ違っただけなのに

それはありありと君を思い出させた。

 

君はいつもぴたりとそばにいるので

写真にはあまり撮らなかった。

君はいつもぴたりとそばにいるので

料理をし、何かまな板から落とせばむしゃりと食べた。

君はいつもぴたりとそばにいるので

話しかければ耳や顔を傾けひたむきに聞いた。

 

君はいつもぴたりとそばにいるので

そばにいるのが当たり前だと思っていた。

 

なんだか夢のような、

ただたまたま道中を共にして

立ち止まり、そして駆けてぬけていった。

 

花に飾られた君、もうあたたかくない君、

もうもどらない君、まだこの先もずっといたかった君。

 

我々と暮らすことは、君にとって幸せだったろうか。

とことこと歩きわたしをおいて先へと

歩く後ろ姿、

もう違う君ではない犬だった。

 

たったひとりの君。

君の横顔を思うによせて