茹だる脳みそと幸福の形の話。


日中ずっと怒りっぽいわりに

体は全く動かなくて、

それでも体はポカポカ火照っていて


認知症やなんかで歯止めの効かなくなった時に

本心が現れるといった話が思い出されて

まいった。


いくら取り繕った優しさを振舞っても

最後の最後で自分の意図しないところで

本心がむき出しにされるのは困る。


頭がひき攣れて右瞼ばかりが突っ張って

世話になった人を指さし

片端から呪いみたいな言葉を吐くところを想像した。


そうはなりたくない。


お前みたいな人間がいるせいで

こんなにも長生きしてしまった!!!!!

こんなにも幸福に一人ぼっちに………


家で静かに過ごしているのに

目まぐるしい景色に目を回したりした。


人も死ぬ犬も死ぬ猫も死ぬ

みんな死んでしまう。


あんまり考えたくない。

目を回していると思い出す。


馬鹿やって友人と鍋突きながら

強くもないのにお酒を飲み散らかして

キスもしない抱きもしない

普段入らない長い風呂に入って

目が回ってホテルの天井が上に向かってせり上がっていくのをみた。


幸か不幸か、殿方と泊まるときに

そんな景色が見えないことに安堵する。


最後に呪いの言葉を吐くことになろうが、

ひとりぽっちを嘆くことになろうが、

それは幸福なこと、

ひとりぽっちになれるのは

それまでひとりぽっちではなかったということ。


心落ち着かなくて、なんだか山月記のような

うちから虎になっていきそうな

そんな夜。


どうせなら赤毛レッサーパンダが良い。