ぬけがらステップ



もうやだ、何もかもやだーー。


ともあれぬけがらステップの話。


仕事に行く道すがら、空の缶ビールと

パンツとGパンが家で脱ぎ散らかされたように落ちてた。


誰かが夜脱皮したのかな。

なんかびっくりした。


その人は夜道誰ともすれ違わなかったのか。

なぜ上着は脱がなかったのか。

謎は深まる。


職場のゴミ箱でも

足の甲から真っ二つに裂けた靴下が捨ててある。

糸が出てるのを誰か引っ張って裂いてしまったのだろうか。


自分もボタンから出る糸を引っ張って

ついにはボタンが取れてしまったことがある。


そして先日。

先輩のトレードマークとも言える

ニット帽がゴミ箱に捨てられていた。


もう毛糸のニットなんて暑いからかな。


でも冬の日にその先輩の帽子かは

わからないけれど

似たような棒針で編んだであろう模様編みの

ニット帽が生垣に落ちていた。


しばらく放って置かれていたので

柱にかけておいたが

待てども暮らせども彼の持ち主は帰ってこなかった。


つちほこりにまみれて、最後は自分が捨てたのか誰かが処分したのか

飛んで行ったのか

いつの間にか消えてしまっていた。


置いて行かれたものたち。


よくわからないものに同調したくないけれども

なんだかここ最近はしょげたりするな。


自分も打ち捨てられて

虫の宿にされるのは困る。


どうにか持ち直したい。


風になびく落とし物、

ぬけがらたちのステップ。


そんな日。



レースを編む幸福の話


レースを編んでると、レースを編む人生の幸福に関して思いを馳せられて良い。


他をやっている時は違うのかというと、ゲームをやったり音楽を聴いている時には

その行為自体を楽しいと感じる事はないような気がする。


ゲームも音楽もそのものが楽しい。


この違いはなんだろうな。

同じ編み物でも毛糸で編んでいる時と違う幸福がレースを編んでると包んでくる。


コーヒー飲みながらしみじみレースを編みたい。

ほんとうにゆっくりレースに気をつけられる時間が良い。


少しずつ編み上がるレースは至福のおとしものみたいな。


何をするわけでもなくしみじみ手を動かしているだけで作品が気づいたら完成してるのでレースを編むという趣味はとてもありがたい。


しみじみの分だけドイリーが増えて行く。

ファイリングしたいなぁ。


そんな日。

夢を見たりなどした話。



朝から目が覚めてうつらうつらしていた


ひとつ目は誰かが自分にプレゼントをくれる夢。


高速を走る小綺麗なトラック、

自分の目の前でドリフトをして停まる。


その反動でトラックの荷台に乗っていた

荷台からはみ出る大きさのユニコーン

ぬいぐるみが車から落ちてしまう。


宅配のお兄さんがペコペコ謝りながら

大きいそのユニコーンのぬいぐるみを

手渡してくれる。


どうしてそんな急いでたんですかって尋ねたら目が覚めてしまった。



二つ目は仕事の夢。


いつものようにトイレ掃除をしている。

だけども気づいたら男子トイレの

洋式トイレにバターを塗ったくってる夢。


いかにも自然な流れで

バターを塗っていたので笑ってしまった。


夢を見るわりに早く目が覚めたので

あまり寝た気がしなかった。


そんな日。


きっとたぶん、まいごの話。




時々ふわふわどこを彷徨ってるのか

訳もわからなくなってしまう時がある。


レース編んだり手を動かしてないと

どこか行ってしまいそうだ。


あれは本当に正しかったのか。

自分のしていることは、考えは

本当に正しいのか。


振り返るな、そう思う。


何が正しいのかはわからない。

ただお前の選択は人を幸福にした。

そう願いたい。


なんだか曇り空。

だから変なことを考えるんだ。


遠いところに

どこか遠いところに魂が離れてしまったような。


帰ってくるのを気まぐれに待つしかない。

早く帰ってきてほしい。


火葬場から立ち上る煙のように

果てへ向かう日。



そんな日。



ちくわぶのその先の話。

ちくわぶのその先の話なんてものはない。


黙々とトイレを磨きながら

疲れ始めたときに自然に口に出ていた。


ちくわぶのその先へ

ちくわぶのその先へ 


ちくわぶのその先とはなんだろうか。

そもそもちくわぶってなんなんだ。


お麩なのかちくわの親戚なのか

はっきりしない。


ちくわほど柔らかくないし

ましてお麩より柔らかくない。


トイレを磨きながらちくわぶに想いを馳せてしまった。


ちくわぶのその先へ


ちくわぶのその先には何があるんだろう。

ガンダーラかな。


そんなことより家のポテトサラダには

ちくわが入っている。


最近は自分が作ってるから

入れてないけども


父さんの作った

ちくわ入りポテトサラダが食べたい。



そんな日。



日記を読むなどする話。


ハルコさんの日記を読んでる。

ハルコさんはハルコさん。


何もかも寝食の時でさえも、気がつけばそれを考えている。みたいな人から

それが奪われてしまうということについて

考えていた。


小学生の頃からずっと続けていたけれど

そのことがきっかけでもうそれについて

したいという気が起きなくなってしまった。


そんな寝食忘れるほど情熱が傾けられるものが自分にはあるだろうか。

それほど失って困るほどのものはあるだろか。


彼女にとってはそれは研究で

色んな人やものから追い立てられて

意識や考えも朦朧としてる中でも

今度はこんな研究がしたいというメモを

書いては泣いてしまいぐしゃぐしゃにしてしまっていた。


放浪の中泊まった宿で女将さんに

幸せになってくれと言われていたけれど

自分も彼女に幸せになってほしいと思う。


まだ読み始めたばかり、ハルコさんは

今どうしているか、幸福であってほしい。


ひたむきな情熱を注いでいたものを

奪ったり奪われたりした人たちに

どうかそれに代わるものが

見つかってほしいと願ってしまった。


もちろん私にも。



そんな日。




星を編んだりする話。



星を編んでる。

今日は一日、雨。


花畑のようなブランケットは

いったんおやすみ。


星を編んでいる。

有名な方が編み図を出しているみたいで

いろんなカラーリングのものが探せば出てくる。


中心から大きくしていく編み方だから

大きくなるまでに時間がかかるし

大きくなったらなったで

編む量が増えてくる。


早く使えるような大きさになってほしい。


雨が降ってるから

本を読んだりコーヒー入れたり

時折星を編み進めたり

がんばりたい。



もう少し書けることが

増えると良いんだけどな。


そうもいかないか。


そんな日。





追記 

これは先日編み上がった

レース糸のハンカチ。


涙を拭くには糸がすこし固そう。


f:id:his_tem:20210321115036j:plain