茹だる脳みそと幸福の形の話。


日中ずっと怒りっぽいわりに

体は全く動かなくて、

それでも体はポカポカ火照っていて


認知症やなんかで歯止めの効かなくなった時に

本心が現れるといった話が思い出されて

まいった。


いくら取り繕った優しさを振舞っても

最後の最後で自分の意図しないところで

本心がむき出しにされるのは困る。


頭がひき攣れて右瞼ばかりが突っ張って

世話になった人を指さし

片端から呪いみたいな言葉を吐くところを想像した。


そうはなりたくない。


お前みたいな人間がいるせいで

こんなにも長生きしてしまった!!!!!

こんなにも幸福に一人ぼっちに………


家で静かに過ごしているのに

目まぐるしい景色に目を回したりした。


人も死ぬ犬も死ぬ猫も死ぬ

みんな死んでしまう。


あんまり考えたくない。

目を回していると思い出す。


馬鹿やって友人と鍋突きながら

強くもないのにお酒を飲み散らかして

キスもしない抱きもしない

普段入らない長い風呂に入って

目が回ってホテルの天井が上に向かってせり上がっていくのをみた。


幸か不幸か、殿方と泊まるときに

そんな景色が見えないことに安堵する。


最後に呪いの言葉を吐くことになろうが、

ひとりぽっちを嘆くことになろうが、

それは幸福なこと、

ひとりぽっちになれるのは

それまでひとりぽっちではなかったということ。


心落ち着かなくて、なんだか山月記のような

うちから虎になっていきそうな

そんな夜。


どうせなら赤毛レッサーパンダが良い。


夢にも出ない矢先の話。


夢にも出ないなんて、いったが

相当疲れていたのか

化粧を半分ほどして

事切れて仕事を休んで眠りこくっているうちに


久しぶりに妹を見た。


うどん屋さんと好きなパスタ屋さんが並んでいて

なんでだろう、うどん屋に並んでいた。


妹がこのうどんを冷製にしてください、

と言っても隣のうどんが期間限定メニューで

冷製なだけで他のうどんはできないと言われた。


横柄な店員にやや自分が沸点上げてる横で

考え直している妹を尻目に

店員は自分たちの後ろの人にメニューを回した。


お子様うどん、冷製坦々うどん、

豚骨うどん。


なんか変なメニューばかりだ。

それぞれ写真が載ってるところだけが優しい。


夢の中の妹は好きだった坦々麺とは

違うものを選んでいた。

冷製なのは好きじゃなかったのかな。


久しぶりに声も聴いた気がした。

ただ姿はメニューを指さす指先だけだった。


自分があまり人と目を合わさないからだろうか。


へんな夢。

もっとまともな夢を見させてくれたらよかったのに。


そんな日。



ひとり遊びの話。


イマジナリーフレンドしかり

現実逃避ならいくらでもできる気がする。


現実逃避の逃避からの逃避みたいな

段々正気に戻ってきたら

それは現実逃避の成功なのではないか。


着地点、現実。七回転半ジャンプ。


ともかく現実逃避。

人が滅多に来ない一角で今日は掃除していた。

とても良い場所だ涼しくて、

人も来ない空想にはとても良い。


そんな時には一人で

誰かとコンビを組んでるふたりの

漫才師のことを空想する。


漫才の入りから、

身振り手振りでボケ役がわちゃわちゃしゃべって

ツッコミ役はふむふむ、いやそれじゃ

〇〇やないかい!あかんやろ!って


しばらくコントして

挨拶してコンビ名紹介して

舞台袖に戻る終わりまで。


拍手はない、徹頭徹尾

二人だけのコント。



ただ、特に考えもしなかった。


漫才考えるなんておかしいなんて、

もうその時点で面白いとまで言われた。

肝心のネタの話はまだしてないのに!


恋人の方がずっと漫才を見てる。

自分の方はあんまりだ。

漫才のシナリオを書きたいなら

もっと漫才を見るべきなのかも。


お前自身がコントだよ!

悲劇的な人生と言われるよりは

コメディ、面白い人生だったねと言われたい。


現実はわからない、でも笑ってれば

楽しい人生だったとは思えなくても

及第点くらいは通過できるんじゃないか。


夜な夜な空想してたネタを書いて

読んでいる本に挟んだ。

休日に会う恋人に読んでもらうためにだ。




たびたびリスのように、メモを

ほんに挟む。


A3の割と大きい紙に書いた

好きなキャラとかの落書きを

折り畳んでしおりがわりに本に挟み

そのまま返してしまった。


図書館の司書さんも

いつもはあんなにくどいくらい

中身の確認をするのに!


しばらくして高校に入った頃。

この本、小学生だった自分が好きだったな、

なんて手に取ったらそのメモが出てきた。


腰を抜かすかと思った。

誰も借りなかったのか!?この名著を!?

って気持ちと誰も借りないでくれ頼む!!

って気持ちが入り混じって頭を現実に抱えてしまった。


ちょっとしたタイムカプセルが恐ろしかった。

忘れた頃に本を売るのが、読み直すのが少し怖い。


不意に爆発する爆弾のような、

自分の描いた漫才のネタが

年を経て爆発しないことを祈る


恐ろしい夜

そんな日。


タフでなければの話。


タフでなければ生きられない。

村上春樹氏の海辺のカフカ

煽り文で目にした気がする。


それをなんとなく自分の弱さを、

節々に目にして時々蹴つまずいた折に

思い出す。


正しくは

タフでなければ生きていけない。

だったようだ。


漫然とここまで生きはしたが

タフでなくても生きていけるのか。

これから帳尻を合わされ精算され

ツケを払わされるんだろうか。


あまり考えたくない、チーズの乗った

ハンバーグカレーが食べたい。


タフであるということ……

今読み直してるわたしに会うまでの1600キロでも度々出て来る。


1日歩き続けても13キロと

思ったが、体重半分くらいある荷物を背負い

山を登っていくのだ。

それも砂漠やら雪野を超えて。


様々なものと出会う。

昔母の好きだった野草とか

昔見た星空だったりとか。


その野草を手のひらで擦り、

香りをかいだ時に鮮明な母の姿を思い出すシーンがある。


人を忘れるときは声から、

においは最後まで忘れないと聞いた。

出典はわからない。


心理学だったのかな、元恋人の〜なんて

記事を読んだがエピソードは覚えているが

人間のことはもう忘れたって感じ。


そんなことより妹だ。

視覚は写真がある、声はきっとどこかに動画が

味覚もきっとあの頃作ってた料理の中に思い出せるかもしれない。


触覚は、棺に入ったもうなんだか

かたい肉というか、2人で見に行った

蝋人形みたいになった柔らかさしか

思い出せない。


わからない、ネイル好きなんだねって

手を取られたけど

記憶すらなくなった妹にモヤモヤして

突き放した時の手のひらとか⁇

あまり思い出したくない。


嗅覚もふと最期にいつもあんなに

綺麗好きだったのに汗くさいなんて

珍しいみたいな……

あの日、レポートもやらずにサボってたんだ


ねぇ、ちょっと、って声を掛ければよかった。

まさか風呂場で死んでるなんて思わないから。


ねぇ、ちょっと……ねぇ、ちょっと……

ねぇ、………


なんであんなに仲良かった妹をおいて

今は不仲に虹がかかるような妹と

ふたりで動画なんて眺めていたんだろう。


3人で見れば良かったのに。

この動画、好きだったんだよ。

ねぇ、このドラマも好きだったよ。


この犬は自分が飼いたがって来た犬なんだよ。


タフでなければ生きられない。

未だにどうして⁇というような

自問自答から抜け出せずにいる。


自分が恋人の歳を確認するときは

亡くなった妹の歳を確認しているなんて

言われてしまったが


享年が末の妹の歳が超えた。

お姉ちゃんの歳を超えてしまったと

妹が話していた。


いつか私の歳を超える日もくるのか。

なんだか気分が暗い。


タフでなければ……

タフでなければ………


タフでなければ生きられない⁇

本当にそうだろうか。


そんな疑問の日。


マットをはたく、そしてそれから…の話。


暑くても風のある良い日だった。

マットを立てかけているところに立つと

この高さがあれば影になって涼しいと思っていたが

影になっていたのはキャップの先で

体はひなたにいたので笑ってしまった。


またマット洗うの?なんて

言われてしまったが

もう今月の分の日付が来ていたのだ。


給料日が来る、それはマット洗いの仕事が

来ると同義なのだ。


風が吹いて砂埃が立ち上っていく。

マット洗いはきついけど嫌いではない。

ひとりで作業できるし

はなから孤独なので誰の目も気にすることなくはたきまくることができる。


砂埃の中にいろんなものを見た。

暑さのせいだろうか。


こんな仕事、同じ大学を卒業した人間は誰もしてない。

こんな仕事、誰も手伝ってくれない。

こんな仕事、こんな仕事……

まるでひとり砂漠の荒野にいるような……

ぎらつく日差しと砂埃の立ち込めてるせいだ。


色々考えたが、大学の先生が職業に貴賎はないと言っていた。

あれがどんな時でも自分を救ってきたような気がする。


パン屋で泣かされてる日も、やけ起こしてちょっぴり勝手にサービスしてる日も。

コンビニで先輩を馬鹿にされて、お客さんに掴みかからん勢いになって悔しかった日も。


こんな仕事就かない方が良いと思うなら

就いてくれてる人に感謝しても良いはずだ。


涼しい中自分の出したゴミを回収する人間がいなかったら

そこら中ゴミだらけになっているし、

吸い殻だって灰皿に捨てたって勝手に片付くわけじゃない。


後輩は日に焼けたくないんですって

言ってたけど自分の仕事では難しそうだ。



飛沫がかかって濡れているのと

飛沫をかけて濡らすのとでは

意味合いが異なることを知った。


濡れたマットをひっくり返すときに

エプロンが砂だらけになって

つい濡れてるしとシャワーをかけてしまった。


びしょ濡れたので絞って干しているが

今日も無事かかっていることを祈る。



こんな仕事……なんて言ってしまったが

マットしばきの仕事は晴れた日にしかできないので

毎月一回行えば必ず虹が見れる。

それは少し幸福なことかもしれない。


どんな仕事でも貴賎はない……

がんばるしかない。


そんな昼下がり。


自分自身について思うところの話。



離職防止策のまとめについて考えてる。

週末までの課題だ。


自分の場合は辞めることより、

辞めさせられるのではという不安の方が

いつも強くてそもそもが難しい………


足りない部分を見せないようにしなくてはとか

もっともっとお店のためになりたいだとか

ポジティブにもネガティブにも

身の丈に合わないことしすぎて空回ってる。


性格も負けず嫌いで強情な癖に

人一倍何やっても弱くて勝てなくて

どこに出しても恥ずかしいみたいな

劣等感が払っても払っても付き纏ってくる。


肩の力を抜けって⁇でもそんなことしたら

わたしはバラバラになってしまう。

そんなことをノルウェイの森で直子が言っていた。


仕事は手を抜くとボロが出そうで

なんだか気を張ってる時がある。


全力で空振りしなくても試合を終えたい。

肘を壊さず完投したい。

苦しい世界でもその先に見えるものを見たい。


自分はスポーツをこれひとつとしたことはなかったけど

ラソンは好きかもしれない。

単純な自分には手足を動かすだけな運動はありがたい。


ペースを守る、フォームを守る、

体力を作り、日々を守る。


やることは手足を動かすだけでルールはないけれど、

やらないと節々痛くなったり

苦しくなることは多い。


今暑くて走れてないけど、秋口には

走れてると良いな。


勉学では勝手にライバルを作って

見せかけの勝負に挑んできた人生だったけれど


結果の出せない運動面で

ちゃんと仕上げてきたんだねと

次の大会ではおもわれたい。


他でもない自分自身に。

もちろん友人にも恋人にも


そんな日。



爽やかな朝だ。

寝坊して筋トレし損ねたからかもしれないが。


文字の群れをなぞるの話。


最近はなんだか心息苦しくて

特に何するわけでもなく陸に打ち上げられた

深海魚みたいに

仕事終わりはなってる。


暑さのせいだ。

そういうことにしておきたい。

またいつもの、みんなは楽しそうなのに

私一人清掃してるみたいなそんな理由ではない。


そういうことにしておきたい。

1日の仕事で一番好きなのはトイレ清掃。

トイレだけ磨いてたい。


多分毎日途方もない量の便器が

右から左へ流れていくのを無心で

磨いていたら白い便器が夢に映りそうな気もする。


でもそうではない、限られた時間の中で

三つの便器をまぁ綺麗になったかなくらいに磨く。

本当はすごく綺麗にしたいけど

洗剤の届かないところはなかなか汚れが落ちない。


自分の限りある人生、時間、

何に使うかは自分次第だみたいな

ご立派だけどそんなセリフが思い出される時

同時にお前はダメ人間の世界一を目指してるのかみたいな

セリフが思い出されたりする。


人間眠らないでいることはできないけど

帰ったらすぐ眠気が来てしまって

映画も見たいゲームもしたい

編み物もしたい、だなんて

とても叶えられない。


久しぶりに本を読んだら、

色んな文字の塊が大挙して押し寄せるみたいな

なんか本を読むの下手になったなって感じ。


山脈の名前がいくつか出てきて

片割れが落ちたので彼女は靴を抱きしめて、

それも谷底に捨てて

一切が過ぎて行った過去を振り返って……


読むペースが早いのか

展開に目が眩みそうになってしまって

もっと、ゆっくり、静かに、読むんだ。


深呼吸してしまった。


映画は相手のペースで進む

本なら自分のペースで進めると思ったが

せっかちなのか、なんなのか

他人の車を運転するような居心地の悪さに酔ってしまった。


パシフィッククレストトレイル、

映画で見た通りなら

あれを遊歩道だと言うのはなかなか手厳しい気がする。


超えてきた人の感想なのだろうか、

自分の想像する遊歩道はまぁまぁ綺麗で

たまに虫が出てはくるけど

トイレットペーパーは設置してあるトイレがあって

たまに芝生は生えてるけど概ね道の形をしている通りがあってみたいな


けして自分の内臓食って糧にしようとかいう

生き物が出ない世界の話だ。


今の時期に暑い中日がな歩いたら

倒れちゃうだろうか。


雨が降らなかったら、

また展示場からの道を歩いて帰ってみようかな……


そんな日。


PS.雨が降らなくても、荷物のある日にそんなことしたら腰を痛める気がする。