蝉時雨の話。


暑い、最近はいつも暑い。

毎日過去最高を更新しているような

気持ちがしてくる。


ただただ外の清掃をしているだけなのに

腕がこんがりしてきている。


でも湿度のない分外の方が

涼しい。

店内はもっと涼しい。

トイレは一番暑い。


暑いっていう人もいるけども

汗が出ないだけ涼しいみたいな

心地。


さておき蝉時雨の話。


外の清掃中隣が公園なので

木が生い茂っていて境を掃除していると

蝉時雨を浴びせられることになる。


なんだかんだ夏が来るたびに

思い出す話だけれど

最近はそうでもなくなった話を思い出した。


小学生の頃、父は毎年蝉の幼虫を連れて帰り

羽化の様子を見せてくれた。


個人的には朝起きたらあの蝉が

外で見るみたいにフラフラ飛んで

張りついてくるかもしれないと思ったら

気が気ではなかったが


いつからか網戸と窓の間で

見せてくれるようになった。


脱線に脱線をかさねている。

その幼虫をつかまえてくる時の話だ。


セミの幼虫を探すのはなかなか大変で

ある日母が、こうすれば

穴からすぐ出てきてくれるという

裏技を調べてきたのだ。


それは穴に水を入れると驚いて

幼虫が出てくるというものだった。


梅雨の時期と重なり、穴に

水が入ることはよくある事で

別にそれで死んだりはしないようだけれど


水を入れて幾らか待ったけれど

ちっとも上がってこなかった。


そうしていつもの母のやばい知識、

本当かどうか怪しいやば知恵が披露された

ものかと思っていた。


しかし、その日はその穴の周辺を

行ったり来たりしても

幼虫はなかなか見つからず

見つからないねというような話をしていたとき

地面の上をのそのそと歩く幼虫を見つけた。


その日は雨が降ったりはしなかったので

先程のやば知恵の被害者と思しき

セミの幼虫が歩いていた。


お尻のあたりが泥で濡れている。

これは絶対さっきの穴の幼虫だよと

連れて帰って羽化の様子を眺めた。


今と違って猫にはたき落とされる

心配もないし、夜中の間に

きちんと羽化し蝉の形になっていた。


蝉の鳴き声がすると一回は

この話を思い出すし、

どこかでもあの知恵が試され

羽化の様子を観察する親子がいるのかなと

想像をめぐらせたりもする。


そんな日。



(調べるまで知らなかったが

あの抜け殻に入ってる状態が

蝉の幼虫らしい。


他にも一体どうやってあんな深い土の

中に卵を産むんだろうと思っていたが

少し成長した蝉が自分で

潜ってあの土の中にいるというので

少なからずびっくりした。)