嫌な兆候のある日の話。


風に揺らぐ蝋燭の火が見える日。

歯車の軋むような音の聞こえる日。


どっちも嫌な兆候のある日だ。


歯車の軋む音のする日は

体が重くて怠くて、動きも緩慢……

いつもの作業をしているはずなのに

無為に時間が過ぎていき、


風に揺らぐ火が見える日は

意味もない不安が追いかけてくる日。

やらずにいたことを実行に移しても

良いんじゃないかって言う

悪魔みたいな囁きの聞こえる日。


眺めているだけの川へ飛び込んだり

高いところから身を投げたり


夢の中なら私は川へ飛び込み

落下する速さで川の魚へ。

深夜高いところから飛び降りた自分は

砕け散って散り散りになって星になったり。


でも紛れもない現実なので

浮かび上がるのは風呂場で見た指より

ふやけた水死体、

砕け散るのは骨と肉。

そんな姿を家族親戚友人に見せるのは困る。


どちらも過ぎ去るのを待つしかない。

台風と一緒。

窓に打ちつける雨の音を聞きながら

風にあおられる木々を見ながら。


どうしてあんなことを?

表向きでも仲良くやれば良いのに

好きでも嫌いでもない消しゴム、

それで良いじゃん。


ズタズタな指先だって直るなら直ってる

頭だって体調だって真人間になれるなら

なってる。


なんでも良かったけど、

なんでも良いけど嫌われるのは嫌だ。


贅沢な話だ……

意味もなく人を嫌う人もいるし、

意味がなくても好いてくれる人もいる。


このままベッドに沈み込んで

ベッドシーツに包まれて

眠っている間に

燃えるゴミの日に出して欲しい。


友人だけはそんなボロボロの指も

直せるならとっくに直ってる

余計なお世話だと一蹴してくれた。


外の景色は明るくても、

心のうちは台風で大荒れ。


台風が接近してる時期な高知みたい景色。


そんな日。