君は日々学ぶロボットの話。


時々ある。


自分を置いて世界が早くまわってるような時期と

世界がゆったりと緩慢に回り

私だけが虚しく滑車の中を

カラカラと忙しなく走り続けているような時。


ハムスターヒロコは私だったのかもしれない。



今はなんだか世界の方が早くまわっていそうだ。

事務所のロックを解除し、扉を開く。

そうすると時々反対側から開けようと

指先だけを伸ばしている人と

扉を挟んで向かい合う時がある。


今日は心定まっていないのか

人間が目の前にいるから立ち止まる、という

オートマティックな反応に身を任せて

棒立ちになってしまった。


なんでこんなところに人がいるんだろう

立ち止まり思考も定まらずどうして良いのか

バグの起こったロボットのように

しばらく個体の認識もできず参った。


彼女はパートさん。

驚かせちゃったかしら、なんて

言葉をかけられてやっと現実に引き戻された気がした。


いつまでも見つめ返すだけで

動かない後輩をどんな目で見ていたんだろう。


濃厚接触者になって休んでいた人が

戻ってきたりしても

なぜかすれ違わないだけで

職場にはずっと居るものかと思っていた。


朝の人は最近なぜ見なくなったんだろう。

なぜかすれ違わないだけで

職場には居るのだろう、か。


ロボットだから、個体の判別が不得手。

ロボットだから、ひとり爪弾きにされる。

ロボットだから、複雑なことは難しい。

ロボットだから、挨拶しても返してもらえない。

ロボットだから、ロボットだから。

ロボットに想いを馳せてしまった。


私もロボットだったら思い悩むこともないんだろうか。


ロボットは死なないと思われていたけれど

パーツの一部が終売して、経年劣化し、

少しずつ壊れていって終わる。

それがロボットの死。


人間も同じだろう。

ちょっとずつ壊れていくか

最初から壊れているか。


自分はいつまで動き続けられるんだろうか。

長生きも短命も、気難しい神さまの手のひら。


雨の日は外で日向ぼっこしなからの

清掃がないから色々と考えてしまった。



そんな日。