一月にはいたあの人の話。


あの、一月にはいたあの人は

辞められたんですか。が

尋ねられなくて4月が終わろうとしている。


薄情なやつだ。

なんとなくシフトに入ってない気がすると思いながら数ヶ月が経っている。


お菓子にお世話になりましたって

書いてあったのがその人なのだろうか。


個数以上に食べるな、それは数で買ってるし

組合費みたいなもので買ってる、

お前の分はないみたいなメモに

心奪われていた時期だろうか。


あの、元気で優しそうな人ですよ!

みたいな

空き地になった場所に何が建っていたのか思い出せないみたいな悲しさがある。


名前を覚えているようで覚えていないんだな。

相手は自分のこと覚えているのに。


仕事始めの日に年末年始良いことあった?

と尋ねられて

筋トレが続いていますと答えて


大会後もマラソンも走りましたよ!と言いたいなと

呑気に考えていたら泡沫のように消えてしまった。


あまりにも姿を見てないまま時が経って

聞きづらくなってしまった。


桜は散ったし、よくわからない

赤いネイルの女の生爪みたいな

植物の皮が落ちている時期になった。


あの元気で優しい人は

今もどこかでも働いているんだろうか。


時ばかりが過ぎていく。


そんな日。